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HOME MEAL MEISTER 02農畜水産物の生産と流通


25-世界の中の日本の水産業

資源枯渇が叫ばれながらも、世界の漁業生産量は一貫として増えつづけている(図1)。FAO*1の統計によると、2014年の世界の漁業生産量(養殖業を含む)は1億9,580万トンと、かつて漁業生産量の上限とされていた1.2億万トンを優に超え、前年より2%増加している。

世界の漁業生産量の増加は養殖の増産によるところが大きい。漁船漁業の生産量は1990年代後半に9,000万トン台に達してから長らく低迷し、2014年には9,466万トンとなっている。それに対して、養殖業の生産量は一貫して増加し、特に2000年代以降は著しい増加をみせている。1960年代にわずか数百万トンしかなかった養殖生産量は2014年には1億114万トンにも達し、漁船漁業の生産量を凌駕している。

図1 世界の漁業・養殖業生産量の推移(資料:FAO)

*1 FAO

国際連合食糧農業機関(Food Agriculture Organization of United Nations)


日本漁業は1984年に生産量が1,282万トンとピークを迎え、80年代後半までは世界一の漁業国としての地位にあった。しかし、90年代に入ると、成長しつづける世界漁業とは逆に、その生産量は下降の一途を辿るようになった(図2)。80年代以降の200海里体制の定着、それに伴う海外漁場の喪失、マイワシやスケトウダラなどの資源の減少、さらには人件費高騰等による経営コストの上昇や漁業者の高齢化などを背景に、遠洋漁業・沖合漁業の漁獲量は減少しつづけて、2014年には479万トンと1950年代の水準に逆戻りしている。

その結果、2014年現在日本は世界第7位の漁業国となり、代わって中国が1990年代から世界一の漁業国となった。世界の趨勢(すうせい、全体の流れ)に比べて、日本漁業は以下の2点において大きな違いがみられる。一つは、日本漁業が海面漁業、中でも特に海面漁船漁業を中心として展開しているのに対して、世界の漁業は養殖漁業、さらには内水面漁業を中心に伸びていることである。例えば、2014年において、世界の漁業生産量に占める養殖量の割合は51.7%に達しているのに対して、日本ではその半分以下の21.3%となっている。もう一つは、内水面漁業の占める割合は世界では30.2%に達しているのに対して、日本ではわずか1.3%である。日本の漁業が海を対象として、特に漁船漁業を中心に展開してきていることがわかる。

図2 食用魚介類の自給率等の推移(資料:農林水産省「食料需給表」)


国内漁業生産が減少する状況下において、旺盛な国内需要を賄う手段として輸入がある。日本では特に1985年の「プラザ合意」を契機とした円高の進行もあって、1980年代中ごろから輸入水産物が急増するようになった。2014年には輸入水産物は432万トンに達し、国内生産量433万トンとほぼ同等水準となり、金額ベースでは輸入金額は1.7兆円に達して、1.5兆円の国内漁業生産額を逆転している。

その結果、1964年に113%あった食用水産物の自給率(数量ベース)は低下し、2014年には60%となり、半世紀もの間に53%も低下したことになる。食料自給率は、国内消費向け分に占める国内生産分の割合として算出され、数量ベース、カロリーベース、さらには金額ベースの三つがあるが、水産物の自給率は三つのベースとも減少している。食料自給率は特に食料安全保障*2にとって重要な意味をもつので、安定した漁業生産を確保することが重要となる。

*2 食料安全保障

食料の安定的な供給の確保に関する事項のことであり、FAOによって「すべての人が、いかなる時にも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料を、物理的にも経済的にも入手可能であるときに達成される」ものであると説明されている。【参考:農林水産省資料】


<参考HP>