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HOME MEAL MEISTER 02農畜水産物の生産と流通


9-青果物の流通と価格形成

かつて野菜は主に都会に近い農村で、旬の季節にだけ生産されていた。近年は生産技術と流通技術が発展し、消費者は全国の野菜を一年中食べられるようになった。それぞれの産地の農家は、収穫した野菜を、農協を通して、または個々に卸売市場やその他の販売先に出荷する。その際、農協の選果場や農家で、卸売市場で取引しやすいように設定されたサイズや品質によって選別・調製してからダンボール箱やコンテナに詰め、主にトラックで消費地に出荷される。また、集荷業者と呼ばれる流通業者が農家から野菜を買い付けて出荷することもある。現在も、国産の生鮮野菜の大半は卸売市場を経由して流通しているが、その比率は輸入品や加工品の増加によって徐々に低下している。

しかしながら、図1にあるように、卸売市場の集荷・分荷機能、公正な価格形成機能、迅速で確実な代金の決済機能、そして川上・川下への情報発信の機能は、青果物を扱う事業者にとっては、欠かせないものである。

図

図1 青果物、生鮮品の流通経路図

(出典:農林水産省食料産業局「卸売市場をめぐる情勢について」)


卸売市場では主に卸売業者と仲卸業者という二種類の業者が営業している。市場に出荷された野菜は、卸売業者に集荷されてから、仲卸業者等と取引される。かつてこの取引の大半は卸売業者のセリ人と多数の仲卸業者等が一堂に会して行われる「セリ取引*1」であった。

セリでは上場された野菜は最高価格を提示した仲卸業者等に優先的に買い取られる。このため、日々の入荷数量の多い少ないによって卸売価格は変動していた。しかし、現在は卸売業者が仲卸業者と直接交渉して価格と数量を決める「相対(あいたい)取引*2」が大半を占めている。

このような取引方法の変化の背景には、市場の顧客の変化がある。かつて、野菜の小売といえば八百屋で、彼らは当日の入荷量とセリの卸売価格を見て弾力的に仕入れていた。最近は、野菜小売はスーパーが約6割を占め、惣菜・外食企業やその納品業者の仕入れも増えている。スーパーや惣菜、外食企業はチェーン方式をとるため、取り扱う野菜の種類、価格、数量をほぼ週単位で事前に決め、これに応じて仲卸業者などから仕入れる。価格は消費者の値頃感をベースに決められる。このため、スーパーや外食関係と取引する仲卸業者は、日々価格が変動し仕入数量も不確実なセリ取引を敬遠し、事前の卸売業者との交渉で安定した仕入が可能な相対取引を選択するようになってきた。

*1 セリ取引

卸売市場における特徴的な売買仕法。買手が値段を競り上げていく「上げセり」や売手が値段を下げていく「下げセリ」、瞬時に最も高い値段を提示した買手を決める「一発セリ」などがある。

*2 相対取引

セリや入札を介さずに、売買の当事者間で値段を協議して行われる取引のこと。


卸売市場外での野菜流通は2割程度を占め、

  • ①農家・農協から消費者への直売(直売所など)
  • ②農協や農業生産法人とスーパーや生協との直接取引
  • ③農協や農業生産法人と外食企業、惣菜企業、及び納品業者との直接取引
  • ④産地の集荷業者などを経由して流通する経路
  • ⑤海外の産地から商社等を通じて輸入され、小売業者・加工業者等に販売される経路
  • などが挙げられる。

これらの流通経路のうち、①は卸売市場向けの出荷に適さないサイズ、外観の劣るものや小ロットものの流通経路として急速に成長し、現在数千億円規模に達していると見られる。また、⑤は安定した大量の仕入が必要な外食や中食の需要増加に対応して急速に増えてきた。

産地を特定して契約栽培などを進める③の経路については、産地をアピールすることによる付加価値、産地との連携における品質向上などの目的に合ったものであり、産地側にとっても、卸売市場を補完する安定した販路として、外食関係などの業務需要への対応が徐々に広がっている。


◆コラム「産地リレー」

 日本列島は南北に細長く、南は沖縄・九州と温暖な気候から、北は冷涼な気候の北海道まで幅広いため、青果物の旬は、地域の気候により様々です。例えば、キャベツは冷涼な気候を好みますが、全国で露地栽培されています。その産地は、春から夏にかけては北上し、逆に秋から冬にかけては南下していきます。作型やこのような「産地リレー」による出荷で青果物の周年供給が実現しています。また、国内産地だけでなく海外とのリレーによる供給も普及してきています。

<参考HP>