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HOME MEAL MEISTER 02農畜水産物の生産と流通


13-農薬の管理と安全性確保

農作物は野生の植物に比べて病気や害虫への抵抗力が弱く、雑草にも淘汰されやすいのが特徴であるが、葉・根・茎・実・花等の可食部分が多く、栄養成分なども豊富で、多様な食味からも私たちの健康で豊かな食生活に不可欠なものとなっている。こうした農作物を植物の生育を阻害する病害虫や雑草等から守り、品質の良いものを持続的に安定したコストで生産するために、一定の農薬や肥料を活用することは消費者の暮らしにとっても重要で、逆に農薬や肥料を使用せずに生産しようとすれば、それに変わり膨大な労力を必要とされるうえ、収穫量や品質も低下し、価格の大幅な上昇を招いてしまうことになる。このように、現在の多種多様な農作物の生産は農薬や肥料の活用なくしては難しく、現代の豊かな食生活はこれらの技術に支えられているといえる。表1に主な農薬の種類と目的を記す。

表1 農薬の目的による種類

一方、農薬は生理活性物質であるため、人や他の生物への影響が懸念される。このためわが国では、農薬取締法に基づく登録制度により、農薬の品質や安全性を確保している。図1に農薬の開発プロセスを示すが、農薬の登録申請には毒性や残留性等の試験成績が必要であり、それらの審査を経て農薬は登録される。この審査は(独)農林水産消費安全技術センター(FAMIC)及び農林水産省、環境省、食品安全委員会、厚生労働省の関係府省が連携して行っている。

図1 農薬の開発


農薬の安全性は、農薬を使用する人、私たち、そして他の作物や動物、あるいは自然環境への影響など様々な視点から毒性実験(動物実験)が行われ、使用法や量が決められる。

毒性試験の結果、有害影響が認められなかった最大量を「安全係数(通常は100)」で割ることにより、「ADI(1日摂取許容量)*1」が設定される(図2)。次に、登録申請された使用方法による作物残留性試験の結果から、残留基準値案が設定される。

その残留基準値案に「フードファクター(その食品の1日当たりの平均摂取量)」を掛けて、その作物からの農薬の推定摂取量が計算される。各作物や飲料水からの推定摂取量を合計してADIに基づく摂取許容量より小さければ、正式に残留基準値として採用される。

図

図2 摂取量と生体影響の一般的な関係(出典:食品安全委員会HP)

*1 ADI(Acceptable Daily Intake;1日摂取許容量)

ヒトがある物質を毎日一生涯摂取し続けても、現在の科学的知見からみて健康への悪影響がないと推定される1日当たりの摂取量


農薬はこのようなステップを経て登録されるが、登録されたからといってどの作物にも自由に使えるわけではない。農薬の使用によって残留基準値を超えないように、使える作物ごとに使用基準が定められる。例えば、キャベツなら「収穫前の7日前まで」「散布して使用する」「使用は3回以内」といったように、使用する濃度や方法、時期、回数、休養期間などが細かく規定されている。

登録されている農薬を使用基準に従って使用すれば、農薬が残留基準値を超えて残留するおそれはなく、安全な農作物を生産できる。使用基準は農薬のラベルに表示され、使用者はこれを守らなければならない。これらの取り組みにより、農薬の品質や安全性、食品の安全性を確保している。


残留基準値を超える農薬が含まれる食品は、食品衛生法によりその販売等が禁止されているが、以前は残留基準値のない農薬が食品に含まれていても規制することができなかった。しかし食品衛生法が改正され、平成18年5月29日からいわゆる「ポジティブリスト制度」が施行された。この制度により、残留基準値のない農薬には一律基準値(0.01ppm)が適用され、これを超える農薬を含む食品は販売等が禁止されることとなった。


<参考HP>