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HOME MEAL MEISTER 02農畜水産物の生産と流通


17-畜産物の生産と流通(1)生産

 

食用となる主な畜産物は牛、豚、鶏であるが、他にも「と畜法」で馬、羊、山羊を食肉として供されることが定められている。最近話題となっている「ジビエ(鹿、イノシシ、熊など)」は狩猟者による解体が行われており、一般に流通する食肉とは区別される。

通常の加工と流通を経て食肉となるためには、家畜の健康な生育が不可欠である。家畜は自然の中で生まれ育っているのでなく、人為的な生殖が行われ、適切な栄養・環境や衛生状態のもと、飼育される。また家畜のための動物用医薬品(抗生物質など)については、その薬理作用や毒性、残留などの安全性についても厳しく管理されており、同様に飼料への添加剤についても、「飼料安全法(飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律)」により、その使用が決められている。特に、抗生・抗菌剤については、添加が許可されている薬剤が決められており、成長ホルモン剤については1967年以降その使用が禁止されている。

(1)肉牛

肉牛には、肉専用種、乳用種去勢牛*1、雑種牛(F1)*2などがあり、それぞれ飼育法は異なる。肉専用種では「黒毛和種」が 95%を占め、高級牛肉の代名詞になっている。図1に黒毛和種他肉牛の種類を示すが、和牛と表示できるものは、黒毛和種を含む4種とこれら種間の交雑種のみである。

図

図1 肉牛と乳牛の種類と国産牛と輸入牛の違い

肉専用種は図2に示す通り、繁殖農家、肥育農家の2段階で生育される。自然交配あるいは人工受精により妊娠した黒毛和種牛の繁殖牛(母牛)は、年1回くらいの割合で子牛を産むが、生まれた子牛は9~10カ月、300kg程度まで育てる。そして、肥育農家がそれを購入し、約20カ月間肥育する。月齢29カ月、体重700kg程度で出荷され、食用に供される。肥育農家は牛の体重をただ増やすだけでなく、また皮下脂肪のような余分な贅肉(ぜいにく)をつけるのではなく、肉としての歩留まり(食用にできる部分の全体に対する割合)を重視し、飼料の配合や与え方などノウハウの蓄積がある。ブランド牛を肥育するため、ビールを飲ませたり、マッサージをするなどが話題にのぼるが、農家独自の肥育手法を工夫している。

繁殖用の雌牛は生まれてから約15ヶ月で子牛を産めるようになり、妊娠期間は約280日で、ほぼ毎年1頭ずつ産み、生涯7~10頭の子牛を産む。その後は「廃用牛」と呼ばれ、肉食用にと畜される。

図2 牛肉の生産経路

(2)乳牛

乳牛は子牛を出産した乳用雌牛が生産する。乳生産はおよそ2歳からである。子牛は分娩後母牛から離されて初乳が与えられ、およそ生後2カ月までは牛乳や「代用乳」と呼ばれる液状飼料を与えられる。離乳後、分娩までの間は粗飼料が主体に与えられる。およそ6カ月齢までを「子牛」、それ以降分娩までを「育成牛」と呼ぶのが一般的である。乳用種の雄牛はほとんどが2~5カ月齢で去勢され、肥育後18~20カ月齢で出荷される。

(3)肉豚

繁殖能力が高いランドレース種雌(L) に大ヨークシャー種雄(W)を交配した一代雑種母豚に産肉能力の高いデュロック種雄(D)を交配して生産した豚(LWD)を肉豚(コマーシャル豚)として肥育する。「三元交雑」がわが国の豚肉生産では一般的である。また、黒豚とはバークシャー種という純粋種で、「黒豚」として販売できるのは、純粋のバークシャー種と定められている。

豚も牛と同様、繁殖と肥育の2段階に分かれており、繁殖農家では、人工授精あるいは自然交配で生まれた豚は、母豚とともに離乳段階まで飼育される。約30㎏まで子豚として飼育され、その後肥育段階を経て、月齢5~6カ月、体重115kg程度で食用に供される。

表1 豚の品種と特徴

ランドレース種(L) デンマーク原産、赤肉率が高く、発育が極めて早い
大ヨークシャー種(W) 英国原産、赤肉率が高く、加工品原料として評価が高い
デュロック種(D) 米国原産、産肉能力が高い
バークシャー種 英国原産、肉質がよく、「黒豚」と呼ばれる。

(4)食用鶏

食肉用として一般的なブロイラーは、産卵鶏同様、原種鶏、種鶏の世界的な供給を欧米の会社がほぼ独占している。コマーシャル鶏の出荷の目安である体重2.8kg程度に7~8週齢で達する。平飼い飼育が標準的である。採食時間を長くするため、1日1時間だけの消灯や連続照明などの照明方法が多い。鶏舎単位で入雛、ワクチン接種などの疾病対策や出荷を行い、出荷後は排泄物の処理、水洗、消毒を徹底するオールイン・オールアウトが一般的である。

一方、「地鶏」は比内鶏など在来種由来の血液百分率が50%以上の国産銘柄鶏で、肉に歯ごたえやコク等がある。JAS法には、飼育期間は80日以上、28日齢以降は平飼いで、飼育密度は10羽/m以下と規定されている。

*1 去勢牛

乳用牛の雄牛は乳を出さず乳用としては役に立たないため、精巣を除去し、肉牛として生育される。

*2  雑種牛(F1)

乳用ホルスタイン種雌牛に黒毛和種を人工授精するなどの一代交雑牛(雑種)のこと。病気に強く、成長が早いという特徴がある。


◆コラム「和牛、国産牛、輸入牛の違いは?」

 国産牛は、原産国が日本となる牛(最も長く飼養された地が日本となる牛)です。輸入牛は最も長く飼養された地が外国となる牛で、日本国外で飼育された牛を国外で食肉用に加工してから輸入した牛肉が輸入牛肉です。

 国産牛のうち、①黒毛和牛、②褐毛和牛、③日本短角種、④無角和種、①~④の交雑種で、日本で生まれ育ったことが確認できるものが「和牛」と呼ばれます。


<参考HP>