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HOME MEAL MEISTER 05加工食品


66-添加物の種類と安全性

人は何かを食べ続けなければ生命を維持できない。食べ物は美味しくて、栄養価があるだけでなく安全でなければならない。文明が発達するとともに加工食品が増え、食生活が豊かになってきた。食品添加物はその一翼を担っているが、根拠のない「風評被害」が多い。

食品添加物という言葉がない時代から食品添加物は使用されていた。代表的なものに豆腐や中華麺などがある。豆腐は江戸時代初期に中国から伝承されたという説など諸説があるが、中国ではそれよりも遥か昔から存在していた。昔の豆腐は海水から作ったにがりを使用していた。現在は豆腐凝固剤を使用しているが、凝固剤の種類によりいろいろな風味や硬度の異なる豆腐を作ることができるようになった。

加工食品の中には食品添加物を使用しないと食品そのものが存在しないものや、品質が保障されないものなど数多くある(表1)。また、食を楽しむということから食品に彩を添えることや美味しく食べるために多くの努力がされ、引き継がれてきた。食品添加物は安全であると同時に、消費者のためにならなくては意味が無い。

表1 食品添加物を必要とする加工食品(例) 

食品 食品添加物 食品 食品添加物
中華麺 かんすい ハム、ソーセージ 亜硝酸塩、硝酸塩
高野豆腐 NaHCO3 食用油 ヘキサン、酸性白土、リン酸など
アイスクリーム 増粘剤 ドレッシング 乳化剤(レシチン)
コンニャク 炭酸ナトリウム チューインガム チューインガム基礎剤、甘味料
パン イーストフード クッキー、ビスケット 重炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム

食品添加物は指定添加物、既存添加物、天然香料、一般食品添加物に分類される(品目数は2017年4月現在)。

指定添加物 天然・合成にかかわらず、安全性と有用性が確認されたものを厚生労働大臣が指定。ソルビン酸など454品目。
既存添加物 使用実績がある食品添加物で、厚生労働大臣が認め、既存添加物名簿に収載されているもの。カラメルなど365品目。
天然香料 動植物から得られ、食品の着香の目的で使用されるもので、安全性と有用性が確認されたものを厚生労働大臣が指定。約600品目。
一般食品添加物 一般に飲食されるもので、添加物として使用されるもの。ブドウ果汁など約70品目。

食品添加物を使用目的や用途別に分類すると図1のように大別できる。食品添加物を申請する時には、効果についてもデータで証明したものを提示する必要がある。

図1 食品添加物の用途別分類 


食品添加物に限らず、食べるものは安全でなくてはならない。安全であるかを知るために、江戸時代には毒見役が試食していたということだが、食中毒や毒物の感受性は人により違うことを考えると必ずしも良い方法とは限らない。現在、食品添加物の安全性評価は動物試験の結果などを基に食品安全委員会で行っている。新規物質として申請するには、下記のような発がん性試験を始め多くの毒性試験の結果が求められ、発がん性が認められるものは開発中止となる。

◆一般毒性試験

28日間反復投与毒性試験、90日間反復投与毒性試験、1年間反復投与毒性試験

◆特殊毒性試験

遺伝毒性試験、繁殖試験、催奇形性試験、発がん性試験、抗原性試験(アレルギーなど)、変異原性(遺伝子等への影響)、体内動態に関する試験(吸収・代謝・分布・排泄)


厚生労働省はADI(☞2章ー13)を超えない量を基に、添加物の有効性等を考慮し、許可する食品や量を定める。その際、一つの食品を多く食べる人がいても、複数の許可されている食品を食べてもADIに達しないように基準値が設定されている。したがって市販されている食品が全て基準値以下で使用されていれば、安全性が確保されているといえる。

しかし、国が決めたからといって実際はどうだろうかと心配になるが、輸入食品は検疫所が検査し、日本の食品衛生法に準拠しないものは廃棄処分か輸出国に積み戻すし、市販食品は都道府県や政令市にある衛生研究所等が常時検査をして、食品衛生法に合わないものは回収・廃棄している。


厚生労働省は食品添加物をどの程度食べているか調査を行い、その結果を公表している。指定添加物のうち、加工食品に残存する代表的な添加物の摂取量をADIと比較すると、硝酸塩以外は極めて少ない(表2)。硝酸塩はADIを僅かに上回っているが、硝酸塩は野菜に含まれており、その摂取量の大半は野菜から摂取しているものである。国内外の食品安全に関する専門の組織はいずれも野菜を多く食べることを推奨している。

表2 食品添加物の一日平均摂取量(厚生労働省発表値) 

食品添加物名 一日摂取量 (mg/人/日) ADI(mg/kg/体重) 対ADI比(%)
プロピレングリコール 12 0~25 2.91
安息香酸 1.11 0~5 1.35
ソルビン酸 3.4 0~25 0.82
スクラロース 0.386 0~15 0.16
食用赤色102号 0.0154 0~4 0.02
α‐トコフェロール 3.53 0.15~2 4.57
亜硝酸塩 0.89 0~0.2 8.9
硝酸塩 190 0~3.7 103

<参考文献>
  • 図解 食品衛生学第5版(講談社)