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HOME MEAL MEISTER 05加工食品


65-インスタント食品

1958年に発売されたインスタントラーメンは、お湯を注ぐだけでラーメンができあがり、当時画期的な発明であった。今では、日本全体でカップ麺、袋麺、生タイプを合わせて56億4492万食がつくられており、これは日本人が年間1人当たり44.3食を消費する量だというから、かなりの量である(2015年)。

「インスタントラーメン」の呼称は、和風のそばやうどんなどの商品もあるが、中華麺の割合が多いため、「インスタント麺(即席めん)」のことを一般に「インスタントラーメン」と呼んでいる。

1965年にJAS規格(日本農林規格)で「即席めん」の品質基準が定義され、その後何度かの改正を経て、今では以下のように定義されている。

  1. (1)主原料を小麦粉、またはそば粉としていること、めんの弾力と粘りを高めるものを加えて製めんしていること
  2. (2)(1)にかやくを添付したもの
  3. (3)(1)(2)のうち調味料を添付したものか、あるいは調味料で味付けしたもの
  4. (4)簡単な調理で食べられるもの

※ただし、かんすい*1を用いず製めんしたものは、成分でんぷんがα化*2されているものに限る

*1 かんすい

中華めん特有の色と風味をつけるためのもの。古来中国では、草木の灰(アク)を利用した。現在では、カリウムとナトリウムの炭酸塩あるいはリン酸塩である。かんすいを入れることで中華めん独特の食感を出す。

*2 α(アルファ―)化

でんぷんの状態を示すもので、米やもちに含まれるでんぷんは、水と熱を加えることによりα化(糊化)して消化できる状態となる。逆に冷えるとβ(ベーター)化し、でんぷんが元の状態に戻り、消化できない構造となる。


インスタントラーメンは、粉から製めんして油で揚げたり熱風乾燥することにより、麺のでんぷんを「α化」する。「ノンフライ麺」は、油で揚げずに熱風乾燥した麺である。他には、生麺をpH調整後に殺菌した「生めんタイプ」がある。

油揚げ麺は、油で揚げた時に無数の穴が開き、お湯を入れた時にそこからお湯が浸透し、即座に麺が膨張して食用になるという仕組みである。しかし、油揚げ麺は酸化しやすいので注意が必要であり、食品衛生法にも酸化の程度が規定されている。その後、麺を乾燥して、かやくやスープの素とともに袋やカップに充填する(図1)。

図1 インスタントラーメン(油揚げタイプ)の製造工程

インスタントラーメンは保存性の高い食品だが、さらに保存性を高めるために、以下のような工夫をしている。

  1. 1.乾燥処理、高温処理
  2. 2.水分活性低下、pH調整、アルコール添加などによる静菌効果
  3. 3.油脂の酸化防止(過度の加熱を避ける、酸化防止効果のある天然ビタミンEを添加するなど)
  4. 4.包装容器の吟味(湿気、光、酸素などを透過しにくい材質を選ぶ)/li>

2008年に、インスタント麺に防虫剤や殺虫剤、洗剤、芳香剤などの香りの強い家庭用品の香りが移る問題があり、クレームとなった。製品の特性として長期間の保存ができることもあり、家庭での取扱いや保管については、以下の点に注意が必要である。

  1. (1)直射日光を避ける
  2. (2)常温で保管する
  3. (3)湿度の低い場所に保管する
  4. (4)においの強いもののそばを避けて保管する

なお、メーカーでは「移り香」に関する取扱いの注意について、可能な限り注意書きや注意マークを表示するよう推奨している(図2)。合わせて、移り香がしにくい包装容器を開発・導入するなど、移り香防止への工夫も行っている。

図

図2 「移り香」注意マークの例


他には、インスタントコーヒー、インスタントみそ汁などがあるが、いずれも「フリーズドライ化」したものや「粉末化」したものがこれに当たる。最近では「インスタント」という言葉はあまり使われなくなったが、インスタントラーメンが発売された当初は、「インスタント」という言葉が流行語のように使われ、コーヒーやみそ汁、その他の食品に使われたものである。


<参考HP>