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HOME MEAL MEISTER 05加工食品


55-さまざまな乾燥方法

表1にさまざまな乾燥方法を示す。自然乾燥には、時間、手間、場所が必要で、天候にも左右され、品質管理が困難である。そこで、短時間かつ成分の変化を最小限に抑えるために、さまざまな人工的な乾燥方法が開発されている。最も簡単な方法は、熱風乾燥である。ただし、熱による成分変化を起こしやすい。低温かつ短時間での乾燥をするために、気流や振動を与えたり、乾燥する面をできるだけ大きくして乾燥させる方法が開発されている。噴霧(スプレー)乾燥は、粉末のインスタントコーヒーの製造などに利用されており、液体を噴霧して、霧状にしたところで乾燥させる方法がとられている。なかでも、利用の機会が増えているフリーズドライ法について、以下説明をする。

表1 さまざまな乾燥方法と代表的な食品

乾燥方法  概要 対象
自然乾燥 陰干し、天日干しなど自然のエネルギーを利用する方法。 干し魚、干し椎茸、かんぴょうなど
人工乾燥 熱風乾燥 熱風を食品に吹き付けて乾燥。人工乾燥の中で最も一般的に使われる。 野菜、果実など
流動層乾燥法 食品を気流中で浮遊させ乾燥。顆粒状に乾燥できる。 スープ、穀類、豆類など
噴霧乾燥 液状食品を微粒化して高温気流中に噴霧して瞬間的に乾燥。粉末状に乾燥できる。 粉乳、粉末コーヒーなど
ドラム乾燥 加熱された回転式円筒の上に液状の食品を薄く塗布し、連続的に乾燥し搔き取る。 マッシュポテトなど
低温乾燥 温度を下げた低温(20~30℃)の空気により乾燥。 水産物、麺、野菜、果実など
凍結乾燥 食品を凍結し、高真空下で水の昇華によって乾燥。 インスタント食品など
加圧乾燥 密封容器中で食品を加熱・加圧後、急激に常圧に戻し、瞬間的に水分を蒸発させ乾燥。膨化食品の製造に利用。 ぽんせんべい、スナック食品など

フリーズドライ(凍結乾燥)は、素材の風味や香りなどの品質成分を保持する上で、最も適した乾燥方法である。コストは高くつくが、水や湯を加えるだけで元の食品の戻り、その復元性が高い。フリーズドライとは、真空中で凍結乾燥が行われるので、「真空凍結乾燥」とも呼ばれる。

フリーズドライの工程は、あらかじめ食品素材を凍結し、氷になっている水分を真空下で、蒸気に「昇華(気化)」させることで乾燥する。真空下では、気圧が低く、沸点が下がる。氷が水になる過程を省き、一気に蒸気として昇華させることが、フリーズドライのしくみである。

図1 フリーズドライによる物質の変化(出典:コスモス食品HP)


フリーズドライ食品は、インスタント食品の具(小エビや貝類、油揚げ、ネギ、ナメコ、ホウレンソウなど)をはじめ、みそ汁、スープ、コーヒー、調味料、野菜、果実、漬物、魚介類、畜肉、天然色素、携帯食、宇宙食、非常用保存食など多くの食品がこの乾燥法で製造されている。フリースドライ製品は、水を加えれば瞬時に、色沢・外観など元の食品と変わらないものになり、復元性は非常によい。一方、氷結晶はそのままの形状で水分を昇華しているので、製品は多孔質になっており、空気中では酸化や吸湿が進み変質しやすい。 このため、製品の保存には窒素などの不活性ガスや吸湿剤とともに密封する必要がある。


長所として、次の点が挙げられる。

  • 食品中の氷を昇華によって乾燥させるため、凍結前の新鮮さや調理時の形状を維持し、色、香り、味、栄養価が維持される。
  • 凍結された食品の水分は結晶を形成しており、乾燥過程では結晶の部分が空隙となって乾燥するので、水や湯を加えると空隙の部分に入りやすく復元性がよい。
  • 42~4%の低水分含量まで乾燥が行われるので長期の品質保持が可能で、かつ軽量になり輸送や貯蔵に便利である。

また、主な短所としては、次の点が挙げられる。

  • 乾燥装置が高額で、かつ周辺設備も必要であり、初期投資が高い。
  • 高度の真空下で操作されるので、高い技術やメンテナンスが必要である。
  • エネルギー消費量が大きい。
  • 製品が多孔質のため、吸湿や酸化が起こりやすい。
  • 製品は麩状でもろく、衝撃などによる機械的破損が起こりやすい。

<参考HP>