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79-食の安全

毎日食べる食品は安全でなくてはならない。近年、「安全」と「安心」が混同され、安全であっても心配する人を少なからず見かけるようになった。安全は科学的に立証でき対処できるが、安心は人の心の問題であり、人により心配の程度が大きく異なる。一度風評が起こると、安全であっても真剣に不安に思う人達もいる。

何でもないものを不安視して食べるのは、美味しくないし、精神的にも良くない。

食品の安全性の根幹となる法律に食品衛生法がある。食品衛生法によると、食品とは口から入るもので医薬品以外が対象となっており、飲み水やおもちゃも対象となっている。


誰もが安全な食品を食べたいと思う。食べて危害が出やすいものとしては、細菌やウイルスがあり、多くの危害が実際に発生している。それに対して化学物質は近年大きな危害はないが、心配する人が多い。特に化学物質の安全性の考え方として「化学物質は全て、量によっては毒になる」という大原則がある。日常食べている砂糖や食塩、水であっても無理に大量に摂取すると毒になり、量によっては死に至ることもある。ビタミン類は体に良いとしてサプリメントを摂取する人も多いが、過剰摂取がかえって副作用などの健康被害を引き起こす場合もある。

普通の食事をしていれば過剰症は起きることはないが、サプリメントなど必要以上に摂取すると副作用が起こる。逆に、誰でも毒性があると知っているダイオキシン類は、主として魚介類や肉類、野菜などからもかなり微量ではあるが摂取している。水俣病の原因物質であるメチル水銀は、魚介類が肉類よりも多く、微量ではあるが検出される。また、イタイイタイ病の原因とされているカドミウムなども大半の人が米から毎日摂取しているが、いずれも微量であるので特に問題とはならない。

もっとも基本的な考え方は「すべての物質は毒になる」ということである。その物質の安全性は、毒性の強さと摂取量を考えて判断する必要がある。


食品は多くの物質から構成されている。例えば果物のイチゴについて考えると、イチゴという物質はなく、揮発性成分だけで250種類以上の物質から構成されている。コーヒーの揮発性物質は少なくとも800種類以上検出されている。トーストの焦げの部分から1000種類以上の物質が見つかったという報告もある。

これら食品から検出された物質をみると、体のために良いといわれている物質の他に、体に悪いといわれている物質も存在する。しかし最も多いのは、体に良いか悪いかが分からない物質である。

食の安全性を考える上で最も重要なことは、「その物質の毒性の強さと摂取量の両方を考えて安全性を判断する」ことである。

微量でも体に悪いものが入っているなら食べないというと、食べるものはない。食品としての安全性の考え方は、生命を維持するための必要性と危害の両方から考えて判断する必要がある。

「天然のものは安心」と考える人もいるが、天然のものでも毒キノコやフグなどの毒魚の他に、社会問題となっている危険ドラッグなど数多くある。我々の祖先が多くの犠牲を払いながら食べて大丈夫なものや健康障害を起こすものなどを体験し、子孫に伝承して現在に至っているものが数多くある。

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安全を守る行政の仕組みとしては、安全性を評価する機関として食品安全委員会がある。その安全性の評価をもとに厚生労働省や農林水産省がある。また、食品の表示については消費者庁が担っている。さらに市販品に関しては都道府県や政令指定都市などが市販品の検査・確認を担っている。

◆リスク分析(リスクアナリシス)

リスク分析(リスクアナリシス)とは、国民あるいは集団が食品中に含まれる危害要因を摂取することによって健康に悪影響を及ぼす可能性がある場合、その発生を防止あるいは低減させるための考え方である。情報を共有し意見を交換することによって危害要因を最小にすることを目的としている(☞6章-81参照)。

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図1 リスク分析(リスクアナリシス)