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HOME MEAL MEISTER 07食の文化と環境


87-多様な食文化

同じ東アジアの中でも、中国、韓国と日本は、食べ物はもちろん、食べるマナーも異なる。日本、中国、韓国と「ご飯とおかず、汁もの」という組合せは同じであるが、その内容は全く違い、食べるマナーも異なる。例えば、韓国では器を手に持って食べず、箸とさじを使って食べるのが通常である。これは気候風土の違いだけでなく、歴史的な背景が大いに影響している。またインドやバングラデシュなど、南アジアに行けば手で食べる文化もある。図1に西洋料理の基本のテーブルセッティングを示す。今の日本では当たり前のこととなっているが、昭和の高度成長期前までは、西洋料理のマナーは、わざわざ学ぶものであった。

図1 西洋料理のテーブルセッティング


交通の発達や情報伝播のスピードが上がり、国境を越えて、食文化もどんどん伝播していく。例えば、米国式のファストフードチェーンは世界各地に展開し、ほぼ世界共通のメニューで、世界共通の調理方法や提供方法で運営をしているが、その市場によって、ローカライズ(現地化)されたエッセンスが加わっていることがある。例えば、菜食主義(ベジタリアン)の多いインドではベジバーガー、日本では照り焼き風味のもの、東南アジアではチリ(唐辛子)風味のものなど、各地のバーガーを食べ比べるのも面白い。

逆に、日本からも多くの日本食レストランが進出しており、ラーメン、うどん、カレー、とんかつなどの新和食レストランや天ぷら、すしなども人気である。今では、日本食レストランの数は世界で8万9千店に上るという。日本から進出したレストランの多くは現地の経営者による運営で、純然たる日本食ではなく、まさに「現地化された日本食」である。それぞれの市場で市民権を得ているのであるから、地域の食文化との融合によってできた新しい食文化とも言える。

ただし、このような異なる文化が融合する一方で、文化と文化の衝突も起こることがある。これは食習慣や信仰により禁忌(きんき)すべき食品(禁忌食)があるからである。図2に宗教などによる禁忌食を示すが、信仰を犯すことになると大問題に発展する可能性もある。2001年に、日本の調味料メーカーがインドネシアで調味料(グルタミン酸ナトリウム)を製造する際に、豚由来のものが使われていたということで話題になったことがある。製造の過程で豚由来の酵素が使われ、実際には製品に豚由来の物質が混入することは全くなかったが、特別な信仰を持たない者にとっては神経質すぎるのではないかと思えることも、とても大きな問題なのである。今やこれは、海外へ出た時だけの話でない。今では訪日外国人も増え、このような異文化への理解が求められ、惣菜業においても、またホームミールマイスターにおいても必要不可欠な知識である。

図2 世界の宗教と禁忌食


イスラム教では、口にしてよい食品を「ハラール(ハラル)」、食べることが許されていない食品を「ハラーム(ハラム)」と読んでいる。豚や酒は禁忌、また水中でも水上でも生きられる動物(カエルやカニ)も禁忌食品で、他にも細かい決まり事がある。牛・羊・鶏などの肉はハラール食品であり、決められた方法で処理されなければならない。コーシャも同様で、ユダヤ教の教えに従って食べてよいものを「コーシャ」と呼ぶ。ハラール、ハラームと同様、禁忌食品と肉の処理については、牧師がコーシャの制度に合っているかどうかを厳格に調べて決める。他にも、インドでは「牛は神の使い」とされて、絶対に食べない。またインドにおいて、ヒンズー教やジャイナ教の信者が「ベジタリアン(菜食)」を実践することが多い。最近では欧米でも、環境保護の観点からベジタリアンが増えている。


<参考文献・HP>