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HOME MEAL MEISTER 07食の文化と環境


85-郷土食、行事食

「郷土食」とは、各地域の産物を上手に活用して、気候・風土に合った食べ物として調理され、伝承されてきた。また、漬け物や塩蔵品などの保存性を高めたものは、特産物として他の地域に流通するものもある。郷土食は作り手側の生活環境が色濃く反映されるため、家庭料理とも重なり、各家庭の味として親から子へ受け継がれてきた。

しかし、現状では郷土料理も失われつつある。その理由として、①食の外部化に伴う、家庭内での伝承の減少、②農産物の流通方法に伴い、地産地消が困難になっている、③郷土料理を好ましく感じる食の趣向や味覚の変化、などが挙げられる。

一方で、低温流通や様々な品質保持技術の発達により、地域に限られていた郷土食が、あちこちで味わえるようにもなっている。伝統的な郷土食から現代的な郷土食(菓子や土産)まで、今ではイベントで、あるいはインターネットなどで家にいながら注文でき、味わうこともできるようになっている。

また、その地をわざわざ訪れて食べることは、食べ物だけでなく、その地の風土や人々との発見があり、郷土食が重要な観光資源の一つとしても注目されている。日本国内だけでなく、海外からも、郷土食を求めて訪れる観光客も少なくない。また最近では、正統派の郷土食ではないが「B級グルメ」など、新しいタイプの郷土食で地域振興を図る試みも話題となっている。

表1 郷土料理(出典:郷土料理百選パンフレット)


行事食には、季節の節目を祝い、五穀豊穣や無病息災、子孫繁栄を願い、神々への祈りや感謝を表す行事の際の食事と、人生の節目を祝う際の食事がある。

古来、一年を立春から冬至までの「二十四節気(にじゅうしせっき)」「七十二候(しちじゅうにこう)」に分け、気候を表してきた。さらに5つの「節句(せっく)」を設け、その時々を祝う食「節会(せちえ)料理」が供されて、その伝承が今に残る。正月の「お節(おせち)料理」も、節会や節句に作られる料理として、この節会料理に由来する。

表2 五節句

節句(よみかた) 別名 日付 行事食
人日(じんじつ) 七草の節句 1月7日 七草粥
上巳(じょうし) 桃の節句 3月3日 白酒、菱餅
端午(たんご) 菖蒲の節句 5月5日 ちまき
七夕(しちせき) 七夕(たなばた) 7月7日
重陽(ちょうよう) 菊の節句 9月9日 菊酒

また、人生の節目には、通過儀礼として、様々な場面で祝いの食が供される。例えば、誕生の「産飯(うぶめし)」に始まり、百日目の「喰い初め膳」、七五三の「千歳飴」などと続く。また、結婚や弔いの際の食も、地域により様々である。

今では、行事食は惣菜産業の重要なメニューとなっており、また新たな行事食も一般的になっている。桃の節句にはちらし寿司、クリスマスにはクリスマスケーキやローストチキンなど、新しい日本の行事食となっている。また、誕生日や家族の記念日、運動会などは、ある意味で現代の行事であるともいえる。現代では、これらの行事の際に食事を手づくりする機会も減り、惣菜産業や外食産業がその調理を担う役割を果たすようにもなっている。


<参考HP>