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HOME MEAL MEISTER 09惣菜と社会


100-食の継承と未来

昭和の中期までは大家族がほとんどで、祖母から母へ、母から娘へ、娘から子へと日常の中で「食文化」や「食の伝統」が受け継がれていた。ところが高度成長期の頃より、人々の生活は一変し、核家族化や女性の社会進出とライフスタイルが大きく変わった。そのような中で日本は豊かになっていった。食品は潤沢になり、栄養も行き届いていく一方で、食卓の団らんは減り、家族がそれぞれ一人で食事をする「孤食」という現象まで現れるようになった。また、食に関する昔からの知恵も誰にバトンを渡せばよいのか、わからない状況になっている。

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日本の食文化の基本は「四季がある」ということである。春夏秋冬それぞれに採れる産物が違い、タケノコで春を、カツオで初夏をというように、食べ物とともに一年が動いている。行事においても食べる物が決まっていて、お正月のおせち料理に始まり、雛祭りにはちらし寿司と蛤のお吸い物、端午の節句には柏餅、月見にはお団子とすすき、大晦日は年越しそばなどと、今でも沢山の習わしや行事食が残っている。また、地方や地域に残っている風習には歴史と共に生き続けているものも多い。そういう伝統は、ぜひとも後世に伝えて行きたいものである。


今、日本型食生活が世界から注目されている。油脂や動物性たんぱく質をあまり使わず、炭水化物(米)中心の和食は、低カロリー食としても認められている。豆腐や寿司はその代表的なもので欧米でも広く親しまれ、普及している。肥満は世界的な風潮となっており、誰もが健康的な生活を維持することに対して敏感になっている。

米を主食とした日本型食生活は、日本人の体位にあったエネルギーを魚介類・大豆・野菜・畜産物などからバランス良く摂り、栄養的に見ても理想的な食生活といえる。また、ただ栄養価だけでなく、その調理法や味付けにおいても和・洋・中華風など様々に工夫され、副食のバラエティが豊富になり、当たり前のように、バランスの良い理想的な食生活となっているのである。

動物性たんぱく質摂取においても、良質なたんぱく質である水産物からの割合が高いなど、畜肉中心の欧米諸国とは違った食生活のパターンを作り上げている。世界に誇れるこれらの優れた食生活パターンは、大いに学んでいかなければならない。


食の未来を考える時に、私たちはまず「食が有限」であるということを忘れてはいけない。地球上には飽食と飢餓が同時に存在し、日本は別としても着実に世界の人口は増加している。私たちの現在の食生活は他国からの輸入によって成り立っていることを考えると、輸入国が干ばつ等になれば輸入はストップし、食料自給率40%の生活を強いられることとなる。毎日食べている典型的な日本食でも、食材の多くは外国産であり、日本で生産される食物の割合は減少している。

地球規模で見ると、気候の変化や二酸化炭素の排出増加等により塩害・砂漠化、海水温の上昇等が極めて速く進んでいる。人口が増加して生産量が減るということは、食べ物が奪い合いになることを示しており、私たちに現在の無駄や食品廃棄について見直さなければならない。摂取する量にも余剰があり、高度成長期に一気に食の欧米化が進んだ結果、脂質とたんぱく質は摂り過ぎ、炭水化物が不足するという食生活になり、肥満と糖尿病の患者が増え、メタボリックシンドロームという現象も起こったのである。

食品廃棄に目を向けると、日本国内における食べ残しや消費・賞味期限切れ等、本来食べられたはずの、いわゆる「食品ロス」は約632万トンとされている。これは、世界の食料援助量の年間約320万トン(平成26年)を大きく上回る量である。我々の食生活は2つの側面で大いなる無駄を出していることを自覚しなければならない。


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食べることは「生きること」である。私たちは現在のような食生活をこれからも続けていくことが出来るのだろうか。地球規模でみればエネルギー資源は有限であり、地球上で得られる食料も有限だということを強く意識し、人類が共存できる道を模索しなくてはならない。

地球上の人口は2050年には100億人を超えるとの予測がある。そして、食糧に関しては今後も大幅な供給増は期待できず、需給バランスは崩れ、安定供給が難しい状況が予想されている。日本の食料自給率は約40%で推移しており、ほとんど輸入に頼って生活していることを強く意識し、食糧戦争などを起こさないためにも、健全な食生活を送る努力と知恵を持つことが大切である。


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昨今、食に関する事故や、食品表示の拡大等をはじめとする様々な法改正等、様々な出来事があった。豊かで楽しい、安全・安心で健康的な食生活を送るためには購買者自身が「食に関する基礎的な知識」を自ら学び、「食の選択力」を身につけることが必要となってきている。

この「ホームミールマイスター」テキストを通じて食に関する基礎知識を学び、健康的な食生活を送るために必要な知識や食品表示などの法令を正しく理解するなど、商品選択に必要な情報を適切に確認できる「食の選択力」を身につけていただくことで、健全な消費活動につなげていただけるものと考えている。