日本惣菜協会メルマガ【法令関係のコラム】2018年10月第2号(2018年10月15日配信)

回回回回回回回回回回回回回回回 法令関係のコラム からちょっと脱線 回回回回回回回回回回回回回回回

今回は、直接法令に関係するわけではありませんが、食品衛生法改正の大きなポイントである「HACCPの制度化」について、惣菜製造事業者のHACCP導入事例についてご紹介します。

 惣菜製造の特徴として、一つの製品を完成させるまでにかかる原材料と工程の数は、他の食品と比べて非常に多く、製品の種類によって重点的に管理しなければならないポイントが異なることが挙げられます。

 例えば、ひじきの煮物など加熱調理する製品は、加熱する時の温度と時間、その後の冷却までの時間と温度が微生物をコントロールするポイントになりますが、加熱調理しない生野菜サラダなどの製品は、電解水や次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を使い、殺菌剤の濃度と浸漬する時間で微生物をコントロールします。また、加熱調理する製品には、賞味期限を長くするため包装してから加熱している袋物惣菜のようなものもあり、加熱後包装する製品とは注意すべき病原微生物が異なっていることも考えなければなりません。

 そこで、今回は、加熱調理の事例として、惣菜工場で「肉じゃが」を製造する場合を例に説明します。なお、一般的な肉じゃがとしてご紹介しますので、使用する食材や調味料についてのご意見は何卒ご容赦下さい。

 肉じゃがは、みなさんご存知の通り、牛肉、ジャガイモ、人参、玉ねぎなどの可食具材を、醤油、みりん、砂糖、だしなどの調味料で煮込む調理です。牛肉は切り落としされたものを仕入れ、ジャガイモや人参、玉ねぎは工場で皮むきから処理するか、加工メーカーから剥きいも、乱切りカットした野菜を仕入れるケースもあるでしょう。いずれにしても、原料として仕入れた牛肉、ジャガイモ、人参、玉ねぎには、その時点では病原性微生物が色々付いています(汚染されているといいます)。また、ジャガイモ、人参には農薬残留や、牛肉には動物用医薬品の残留も懸念しなければなりません。そのような、食べた人に危害を及ぼす要因を「危害要因」といいます。そして、水を含めた肉じゃがに使用するすべての食材、包装容器、商品ラベル(サーマルシール)について、危害要因があるかないか、あるとしたら、その危害要因をどの工程で除去(殺滅、減少)するかを明確にすることが「危害要因分析」です。  この危害要因分析で「ここで危害要因を除去する」として決めた工程が「重量管理点」となります。  例えば牛肉やジャガイモ、人参に付着している病原微生物を確実に除去するためには、煮込みの工程が最も適切な工程といえます。多くの病原微生物は、熱に弱いため85℃以上、1分間の加熱調理で殺菌できますが、中には耐熱の芽胞を形成する病原微生物(耐熱菌といいます)もおり、それらは単なる煮込み調理では殺菌できません。つまり、加熱調理してもまだ肉じゃがには耐熱菌が残存しているのです。耐熱菌は、活動に適した温度になると、菌の胞子を出して増殖したり、毒素を出して食品を汚染するため、食品の温度(品温)を速やかに冷却して、活動しにくい温度帯に冷やしてやることが重要です。  この冷却工程でポイントとなるのが、「速やかに」ということです。  加熱調理が終了してから品温が下がるまでにかかった時間がゆっくりだと、耐熱菌が活動しやすい温度帯になっているときに、増殖や毒素が産生され、結局は食中毒につながってしまいます。そのため加熱調理が終わってから30分から1時間以内に、食品の中心温度を決められた温度(例えば10℃以下など)まで下げる冷却が求められるのです。

 筆者も過去惣菜メーカーに勤めていた経験がありますが、卯の花を製造した後、真空冷却機にかけることを忘れてしまい、そのままプラスチックコンテナに入れて放置していたら、気づいた作業者が気を効かせてその卯の花を冷蔵庫に保管してくれました。3時間後包装作業を行う部屋から係長が飛んできて「卯の花が糸を引いてるぞ!」と…。200Kg分の卯の花を廃棄することになり、上司からは大目玉を食らいました。出来立てをそのまま冷蔵庫に入れておくと、3時間で糸を引くまでになるということを知り、それ以降は必ず自分で真空冷却器にかけるようにしました。

 わき道にそれましたが、原料の牛肉や人参、玉ねぎに付着している病原微生物については、加熱調理(煮込み工程)だけではなく、その後の冷却工程(真空冷却など)も正しく行わないとコントロールできないということをご理解ください。

 加熱調理と冷却工程まで進んだとして、次は肉じゃがの包装工程になります(包装作業するまでは冷蔵庫で保管されますが、この管理は主に一般衛生管理で行うものなので割愛します)。  肉じゃがの包装工程は、主に手作業で行われることが多く、包装を行う作業者の手指(もちろん手袋は着用してますが)からの二次汚染に注意しなければなりません。また、作業しているあいだは作業室の室温にさらされるため、ここでも微生物が増殖する可能性が出てきます。そのため、頑張っても終了するまで1時間から2時間かかるような量を一度にラインに持ってくるのではなく、こまめに必要な分を冷蔵庫から持ってくることが大切です。

 コンシューマーパックに包装された肉じゃがは、コンベアーの終点で表示ラベルが貼付され、金属探知機、重量チェッカーを通って完成になります。  金属探知機(金属検出器といいます)は、商品内に食べた人に危害を及ぼすような金属片などが入っていないかをチェックするためのものですが、商品を機械に通す前に、小さな鉄(Fe)とステンレス(Sus)の玉(直径2~5mmくらい)を通して正しく排除するかをテストします。このように正常に稼働する(金属異物が混入していたら排除する)金属探知機を通過させてチェックすることで、金属異物が混入した商品が出荷されることを防いでいます。  このように製造工程の中では、常に制御すべき危害要因を分析し、重要な工程を決め、その工程を正しく行うことで、危害要因を含んだ商品が出荷されないようにしています。  作業工程と重要管理点は概ねこのように管理していきますが、HACCPとしては、重要管理点ではどのような作業をしなければならないかを決め、それが実行されているか確認していかなければなりません。危害要因を除去するためには、どのような管理方法で、何を管理基準にして、いつ、誰が、何を、どのくらいの頻度でチェックするかを決めて運用して行かなければなりませんが、今回は長くなりましたので、以降のメルマガで解説していきます。

次回は野菜サラダを例に、非加熱調理の事例を解説してきます。

2018-10-15